JR牟岐線辺川駅から徒歩15分、国道沿いにある、「へんろ宿南天」。
居心地のいい離れ、お手製のピザ釜、すぐ近くに山があり、鳥のさえずりがきこえてきます。
国道が近いのに、なぜかとても静かで、旅の途中に立ち寄る場所として、心安らぐ雰囲気に
なっています。
今回は、そんな魅力あふれる「へんろ宿南天」を営んでいる、木内ミユキさんを取材させて
いただきました。
「民宿やゲストハウスではなく、「へんろ宿」にしている理由は?」
四国という場所で宿をつくって、誰かに泊まってもらうなら、
「お遍路をしている人たちが立ち寄ることができる場所」として宿をやりたいという
思いがあったからです。
また、江戸時代に、もともとこの家がある土地で、へんろ宿をやっていたと
聞いたことがあったので、はじめました。
「そもそも宿をつくろうと思ったきっかけは?」
この家で一人で暮らし始めてから、納屋の上の部屋が余っているな〜と気づいたんですね。
納屋の上の部屋の雰囲気は、私(木内さん)自身とっても気に入っていて、
せっかくなら有効活用したいなと思って始めました。
私の性格をよく知っている知人や家族からは、「宿をやって大丈夫?」と心配されましたけど(笑)
「へんろ宿としてこだわっているところはありますか?」
朝ごはんを必ず出すことですね!
徒歩でお遍路をしている人たちは、毎日かなりの距離を歩いてきています。
朝食を食べて、エネルギーをつけ、しっかり歩いて旅を楽しんでほしいので、朝食を準備しています。
そもそも旅の荷物に、朝ごはんを持たなくていいだけでも、負担軽減になるんですよね。
「ホームページに「可能なかぎりほったらかす」という言葉がありましたが、
あちらもこだわりのひとつですか?」
そうですね。「構いすぎないこと」も、大事にしています。
旅の疲れをできる限り癒して、回復していって出発してほしいので。
うちに泊まりにきたからには、ぐっすり眠っていってほしいですね。
「ホームページにピザ釜がありましたが、ピザに惹かれてやってくる方もいるのでは?」
ピザはかなり好評ですね!!
生地にかなりこだわっていて、レシピが完成するまでに1年かかりました。
日本人の好むピザ生地を研究しましたね〜。
最近はピザだけを求めて問い合わせてくる方もいらっしゃいます。
ちなみにピザ釜はAmazonで発注して、息子と組み立てました。
結構簡単にできるものなんですよ。
「宿を始めてから今まで、どんな出会いがありましたか?」
2019年2月26日に初めての宿泊客がいらっしゃいました。
そこからクチコミやHPを見てきてくれる人が増えていって、これまで
のべ120人近い方が宿泊してくださっています。
コロナウィルスが広がる前には、台湾などからも尋ねてきてくださった方と
出会えたこともありましたね。
私(木内さん)は、外国のお客さんとお話をするのも好きで、楽しいですね。
また、ご夫婦で別々にきてくださったこともあり、奥さんから「絶対立ち寄るように!」と
言われたんだと旦那さんから話を聞いた時は、驚きましたが嬉しかったです。
深夜までお客さんと話し込んで寝不足になったことも、とても思い出に残っています。
「へんろ宿をやっていて、大切にしていることはなんですか?」
人生で大切にしていることが、宿に自然と反映されていると思います。
例えば、働いていたときに出会った、外国籍の方々から「自分を出すこと」の大切さを学んだので、
お客さんと話すときは「自分を出すこと」を意識していますね。
あとは、どんな年齢の方に対しても、たとえ子どもであっても、
人格をもつ人間であることを忘れないことですね。これは、母の教えなんですけど。
それぞれの人がそれぞれの人生を生きているので、どんな人生も、どんな状況であっても、
それを否定することはしないようにしています。
自然の中に宿があることも、大切にしていて、とても気に入っています。
「最後に、なにか伝えたいことはありますか?」
、、、とくにないですね、なんて(笑)
人と話すことや、だれかの手助けをすることが好きなので、宿を営むことは
自分の性格にあっているなと思っています。
そろそろお遍路を再開する人が増えてくると思うので、徐々にお客さんが増えてくることが楽しみです。
【編集後記】
今回、南天さんには、2週間弱宿泊させていただきました。
木内さんとは、朝食時によくお話をしていたので、取材のときも、いつも話している時のように
リラックスして話すことができました。
宿泊中は、「可能な限りほったらかす」というホームページの記載通り、付かず離れず、
適度な距離感で接してくださっていたので、他の仕事をしながら滞在するには、
心地のいいコミュニケーションでした。
第二の実家とも思えるほど、本当に居心地がよかったです。
また牟岐町を訪れる際には、必ず南天さんにお世話になりたいと思います。
取材にご協力いただいた、木内ミユキ様に、改めて感謝申し上げます。
へんろ宿「南天」
徳島県海部郡牟岐町大字河内189
電話:090-4026-5889 (受付:午後)
河本 千晴(かわもと ちはる)
福岡県出身 25歳
2019年3月ひとつむぎでインターンとして牟岐町に1週間滞在。
その後、福岡県のフリースクールを運営しているNPO法人に就職。
就職後から現在まで、ひとつむぎとの関わりは継続しており、2020年の徳島市内で行われた、
中高生対象の対話型プログラムのアドバイザーとして企画・運営に携わった。
2022年5月ワーケーション(余暇を楽しみつつ仕事をすること)のため、牟岐町に約2週間滞在。